宮本養鶏場 宮本健太郎さん
2024年11月、愛知県田原市にある宮本養鶏場を訪問しました。
宮本養鶏場は、ケージ飼育と平飼い飼育をしている養鶏場です。
約50年前、お父様の宮本吉雄さんがケージ飼育での養鶏業を始め、7年前に息子の宮本健太郎さんが平飼い養鶏を始めました。
バタリーケージから平飼いへの移行
以前、ケージ飼育の作業中に殺虫剤が健太郎さん自身に掛かってしまい、体を壊されたことがあったそうです。その経験から、人体に悪影響を及ぼす可能性のある薬剤を使用しない養鶏をやりたいと思うようになり、平飼い養鶏をスタートされました。
すべての鶏を一気に平飼いに変えることは難しいですが、ケージ飼いから平飼いに徐々に移行させ、近々、すべての鶏を平飼い飼育にされる計画です。
■参考記事 「ケージ飼いから平飼いへ」
宮本養鶏場の取り組み
■鶏に優しい飼育環境作り
宮本養鶏場では庭付きの開放平飼い鶏舎(フリーレンジ)で飼育をしています。開放平飼いはずっと鶏舎の中に鶏を入れた平飼い(フリーケージ)とは異なり、鶏は天気の良い日に自由に外の庭に出ることができます。外では日光浴や、運動ができ、鶏の欲求を満たすことができます。
また、鶏舎内の地面はコンクリートや金網の床と違い、発酵させた土が床に敷いてあるため体の負担を減らすことができます。他にも、鶏の習性を生かし、産卵場や、寝場所を作っています。薄暗く、外敵がいないかを確かめられる産卵場では鶏が安心して卵を産むことができます。
また、寝場所には入り口から遠く、高いところで寝たい欲求を満たすために止まり木を作りました。このように鶏が安心できる場所、健康に過ごせる場所を作ることで質の高い新鮮で清潔な卵が提供できます。
■消毒剤、殺虫剤、薬剤を使用しない工夫
【消毒剤】 卵は産まれたときにキューティクル(クチクラ層)と呼ばれる保護膜に覆われています。これは卵に菌が入らないように守る役割をしています。しかし、卵を消毒洗浄することによりこの膜が取れ、洗剤が卵の中に入ってしまう可能性もあるため、宮本養鶏場では卵の消毒洗浄は行わず、お湯洗いをしています。また、卵を消毒洗浄せずに済むよう、産卵箱を常に綺麗に保っています。
【殺虫剤】 養鶏場にはダニが集まります。殺虫剤を使いたいところですが、使うと餌に混入し、卵を食べる人間のアレルギー等の原因につながる可能性があります。しかし、平飼いには解決策があります。平飼いの場合は地面に稲わらや落ち葉、草、腐葉土を敷くことで鶏が砂浴びをします。これは身体に着いた虫などを落とすための行動で、人間でいうところのシャワーを浴びるのと同じ行動になります。砂浴びをすることで、鶏が身体に着いたダニなどの虫を落とし、殺虫剤を使わなくても鶏舎を清潔に保つことができます。
【薬剤】 薬剤の使用過多は薬剤耐性菌を生み出すことに繋がります。そのため、鶏が薬剤に頼らず丈夫な体を作ることが大切です。宮本養鶏場の鶏は風邪を引いた場合、外に出て、野菜やゆで卵、重症の場合はニンニクを食べます。しばらく時間がたつと回復しています。
このように、化学薬品を使わない工夫をすることでより美味しく、安全・安心で、長持ちする卵を生産することができます。
■調理くずの利用(スーパーと養鶏場のタッグ)
地元のスーパーで出る葉物野菜や果物などの調理くずをもらい、鶏の餌に活用しています。全ての調理くずを鶏が食べられるわけではないので、必ず選別をして必要に応じて熱処理も行います。調理くずを活用することで、価格が高騰している配合飼料の使用量を抑える事ができるだけでなく、スーパーで調理くずの廃棄に掛かっていたコストを抑える事ができ、環境への配慮にも繋がっています。
■平飼い卵の販路
販路は地元のスーパーや飲食店、オンライン販売等です。
スーパーの店頭には、平飼い卵を知ってもらう為の啓発ポスターも設置されています。
助成を受けての活動
鶏が外で自由に運動するスペースを拡充するために、平飼い鶏舎の外周にフェンスと天井ネットを設置します。助成金はその工事費用と、古くなった産卵箱の交換のために活用される予定です。
今後について
今は使われなくなったケージ鶏舎(二階建て)を、平飼い鶏舎用に改修し、全ての鶏を平飼いにします。現在、鶏舎作りに詳しい業者の方と相談をしている段階で、2025年には工事が開始予定です。一階部分は全面平飼い、二階部分は卵の作業場と雛育成場になる予定です。
代表の宮本健太郎様よりメッセージ
薬品会社の営業でたくさんの養鶏場を訪問し、実際に自分でも平飼い、
ケージ飼いを両方経験し、鶏が一番健康で幸せそうに生活していたのが、外に出られる平飼いでした。自分達が生活していくには、ケージ飼いの方が良いかもしれません。
でも、ケージ飼いは、たくさんの犠牲の上で成り立っているように思えました。
子供の世代、孫の世代を考えると、『外に出られる平飼い』がベストな選択肢だと思いました。
今後はその平飼い卵の生産コストを下げるためにどうしたら良いか。
そしてそれを広めるにはどうしたら良いか?
次の世代に良いものを残すために、取り組んでいきたいと思います。
宮本養鶏場のSNS
ホームページ https://nagomitamago.net/
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Instagram https://www.instagram.com/nagomitamago/
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