先日、公益財団法人横浜市緑の協会「金沢動物園」を訪問してきました。
■活動内容
絶滅危惧種であるミゾゴイの保全に資するため、飼育下(横浜市繁殖センター)繁殖したミゾゴイを金沢動物園に移管し、
野生復帰訓練したのちに試験的に放⿃し、放⿃技術を確⽴することを⽬指す。
■ミゾゴイとは
夏鳥として4月頃に本州、四国、九州に渡来して繁殖、10月頃に越冬地であるフィリピンなどへ渡り越冬する。
全長約50cm、体重約600g、雄雌ほぼ同大、同羽色。標高1000m以下の平地から山地の沢の流れる雑木林などに単独またはつがいで生息。ミミズや昆虫、サワガニなどを餌としている。
■活動の必要性
IUCNレッドリストにおいて絶滅危急種に指定され、横浜市立動物園では平成16年度から対象種の飼育繁殖に取り組み、これまでに17羽の繁殖に成功すると共に、15年以上に亘る長期飼育にも成功しています。一方で、対象種の野外における個体群は減少傾向にあるとされているため、生息域内保全が必要な状況です。そのため、飼育個体の生息域内保全への活用を検討することで、対象種の生息域内保全活動の拡充を目指します。
■活動の目的・成果指標
放鳥個体が越冬地から日本に再渡来すること
■活動状況
飼育下繁殖したミゾゴイを2023年5月より順化訓練後、2023年8月に試験放鳥しました。(追跡調査中)
▷順化訓練
①施設順化:繁殖センターから移動し、追跡装置を装着後、順化施設へ
➁野生下での餌(ミミズ等)の採餌訓練:体重変化を確認しながら通常餌を段階的に減量し、ミミズ等の野生餌を投入。そもそも野生下のミゾゴイの体重自体不明なため、ミゾゴイの生態調査をする機会になったとの事。
③飛翔訓練:順化訓練施設は15m×15m×3.5mの既存施設を改修して使用。
▷追跡調査
①追跡装置によるモニタリング:長時間の記録が必要な為ソーラーパネル式の装置を採択。しかし、放鳥後受信機からデータが来ず、緑を好むミゾゴイの性質上十分な充電ができなかった可能性あり。
➁目視調査:周辺住民の協力も仰いでいる。10月に放鳥場所から少し離れた園内で一般の方からの目撃情報あり。
■助成金の使い道(一例)
・順化施設の改修費
・順化施設の記録用カメラや追跡装置
■今後の計画
現在課題となっている追跡装置の選定や引き続き順化訓練の充実、行動把握に努めていく。
■ここだけの裏話
・採餌訓練に使用するミミズは地場産:購入も検討したようですが、動物園の生態系保全の為にも飼育員の方が土を掘り地場産のミミズを用意したとの事。
・追跡装置の工夫:ミゾゴイに負荷なく設置する為、形や重量、装着方法など綿密に検討したとの事。
今回、金沢動物園を訪問し、ミゾゴイの保全事業について様々なお話を聞くことができました。
試行錯誤をしつつ、一歩一歩着実に取り組まれておりました。希少種の保全事業・活動は広く知れ渡る機会が少ないかと思いますが、当財団の助成がそのきっかけ作りの役にも立てたら幸いです。
公益財団法人横浜市緑の協会「金沢動物園」の皆様、繁殖センター所長様、どうもありがとうございました。
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