『二ホンツキノワグマと人のより良い関係を考える、シリアスゲームの開発と保全教育プログラムの実践』
盛岡市動物公園ZOOMOについて
盛岡市動物公園ZOOMOは、人、動物、環境(生態系)の健康は相互に関連していて一つである”という考え方「One World-One Health」を理念に掲げ、野生生物の保全のみならず、自然環境の保全、人の福祉、動物の福祉(Animal Welfare)に資する事業を展開しています。
現在飼育している動物たちの「動物の福祉」に配慮した飼育展示を心がけ、動物たちのQOLの向上や、その動物種らしい行動や暮らしが発現できる飼育環境の多様さと選択肢を提供することを目指しています。
【活動目的】
岩手県内には約3700頭のニホンツキノワグマが生息しており農作物被害や人身被害、市街への出没が増えたことにより、有害鳥獣捕殺が行われています。しかし、人とクマの軋轢の多くは、人の暮らしの変化やクマへの不理解、人の不注意に起因するものも多く、その対策が必要とされています。
そこで、ニホンツキノワグマと人とのかかわりに関する社会課題解決を目的としたシリアスゲームの開発を行いました。シリアスゲームを活用した保全教育プログラムの開発・実践を通して、正しい知識と防除対策についての普及、子どもたちの学びを支援し、地域の生物多様性の保全に資することを目指しています。
【助成金を受けての活動】
①シリアスボードゲームの開発、製作
シリアスゲームとは「社会問題」の解決を目的としたゲームのことであり、この活動では「二ホンツキノワグマと人のより良い関係」という目的に絞って「クマと僕らの物語」というボードゲームを作成しました。
プレイヤー同士協力をしながら、森を豊かにするともらえるポイントと、まちを豊かにするともらえるポイントの合計を競います。クマがまちに出没して被害が出てしまうと大きく減点されてしまうので、ツキノワグマが人里に下りてきて被害が出ないための対策を講じるのもゲームを有利に進めるポイントです。
②ワークショップの開催
完成したシリアスボードゲームを活用した教育プログラムの一環として、様々な世代層を対象にワークショップを開催しました。
参加者はゲーム前の事前学習で学んだツキノワグマの暮らしと、私たち人間の暮らしにどのようなつながりがあるのか、どうしたら被害を未然に防ぎ、持続可能なより良い関係を築くことができるのかを考えながらゲームに挑戦しました。
シリアスボードゲームではその効果を高めるために、振り返りと個々の気づきの共有が非常に重要であるため、ゲーム終了後には、ゲームを通じてどのようなことを感じたり気づいたりしたのか、なぜ上手くいったのか、なぜ上手くいかなかったのか、どのようにしたらもっと良い結果になったのかなどを振り返り、全員で共有しました。
【活動の進展】
今回の活動内容がメディアにも取り上げられたことで、より広い層に活動を知ってもらうことができ、この取り組みを切り口に様々な企業や団体からの賛同が得られ、普及啓発活動が拡大されました。
・図書館や地域の産業まつり当での体験会
・大学での授業
・自治体主催の環境学習講座の実施
・市民講座でのワークショップ
・市議会議員の環境保全対策特別委員の方々に対してツキノワグマに関するレクチャーとシリアスボードゲームを組み込んだプログラムを体験してもらう
・岩手県主催の環境系のフォーラムで地元専門学校の生徒さんにファシリテーターをしてもらい体験会を実施
・動物園教育に関する書籍でシリアスボードゲームとプログラムに関して事例紹介を掲載予定
・団体や教育機関へのボードゲームの貸出など
シリアスゲームの知名度が上がるにつれ、活用していただける場所が増えています。 自治体、保全団体、研究機関、教育機関等と連携した普及啓発事業を実施することができたと共に、ボードゲームという新たな切り口を介して、これまでに直接的なつながりがあまり無かった様々な業種の方々が取り組みに賛同し、普及啓発の裾野を広げる効果が今後も期待されます。
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