ヤンバルクイナ繫殖施設

左から、NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄 副理事長 金城道男様

JAC環境動物保護財団 理事長 田崎ひろみ、評議員 田崎忠良

NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄 理事長 長嶺 隆様

理事長の田崎ひろみが「NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄」の皆様にご案内いただき、ヤンバルクイナの保全活動の現場を視察しました。

2023年度助成金では、ヤンバルクイナの保全活動を行う以下の団体を支援しています。

1.NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄

沖縄に生息する希少な野生動物の保護を中心に活動しています。

主な活動のひとつである「ヤンバルクイナ保護プロジェクト」では、外来種の影響や交通事故等により個体数が減少しているヤンバルクイナを保護するため、地元である沖縄県国頭村安田区の協力を得て「ヤンバルクイナ救命救急センター」を設置し、救護・死因究明・飼育下繁殖など生息域内・域外の様々な保全活動を実施しています。また、平成20年度より環境省のヤンバルクイナ保護増殖事業計画の一環として飼育下繁殖事業を行っています。

助成対象活動①ヤンバルクイナをはじめ沖縄の希少種を鳥インフルエンザから救う活動

ヤンバルクイナが鳥インフルエンザウイルスに極めて弱いことが判明しましたが、沖縄県内では鳥インフルエンザに感染したことを確定できる検査機関や検査機器が無いため、万が一発生しても、緊急時の対応が不可能な状況にあります。当財団の助成金は、緊急時に特効薬をヤンバルクイナに投与するために迅速に診断できる小型のリアルタイムPCR法による診断機器や感染個体ケージの購入等にご活用いただいています。

助成対象活動②野生個体の親子の育雛期の調査

ヤンバルクイナが安定的に生息していけるかどうかの推定を行う個体群存続可能性分析(PVA)には、その年に生まれたヒナのうち何割が1歳を迎えられるかを知ることが重要です。そのため、調査予定地で把握している複数組のヤンバルクイナのペアをモニタリングカメラで観測し、孵化したヒナの1年生存率を推定し、より現実に近いPVAを行います。これにより、ヤンバルクイナが将来にわたり生息できるようにしていくための課題や対策を明らかにすることを目指しています。こちらの調査のためのカメラ機器の購入に助成金をご活用いただきました。 

2.公益財団法人 山階鳥類研究所

1932年設立、日本で最も歴史ある鳥類研究所の1つで、絶滅危惧種のアホウドリやヤンバルクイナなど、希少種の保護に関する研究も行っています。ヤンバルクイナについては、飼育下繁殖後に放鳥した野生復帰個体を追跡して、生存期間、死因、行動範囲等の情報を収集し野生個体と比較することで、より野生に適した野生復帰個体を増やすことを目指しています。

助成対象活動 ヤンバルクイナ保全のための生態調査

環境省の飼育・繁殖施設で育った若いヤンバルクイナに識別用金属足環と野外観察用のカラーリング、小型電波発信機を装着して野外に放鳥、生存状況や行動の範囲、営巣状況等を追跡します。追跡したヤンバルクイナの動向から繁殖行動を把握し、営巣場所等の確認ができたら抱卵・孵化・巣立ち・捕食の状況等をモニタリングします。当財団では、現地調査に係る旅費や人件費、自動カメラなどの備品類購入へご支援いたしました。

 

視察レポート

NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 動物病院

まずは「NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄」理事長 長嶺隆様、副理事長 金城道男様にご案内いただき、うるま市の動物病院へ訪問しました。こちらでは、交通事故をはじめ様々な人間活動が原因で野生動物が運ばれてきます。

交通事故で脊髄を損傷したヤンバルクイナ。野生復帰が困難なため、病院でケアを続けている

本助成で整備された、ヤンバルクイナ保護のための鳥インフルエンザウイルスを検出する機器

やんばるの森

公益財団法人山階鳥類研究所 協力調査員の渡久地豊様とお会いして、ヤンバルクイナの追跡調査についてご説明いただきました。追跡調査では、行動圏やつがいとなり産卵・孵化・巣立ちに成功した事例など教えていただきました。

大保ダムにて
右から2番目が「公益財団法人山階鳥類研究所」渡久地豊様
追跡対象のヤンバルクイナ
ヤンバルクイナの巣卵とふ化直後の雛

環境省ヤンバルクイナ飼育・繁殖施設

NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄の玉那覇 彰子様にご案内いただきました。人工飼育下で繁殖に成功したヤンバルクイナを自然環境下で生き抜けるよう、訓練をしています。訓練した個体は山階鳥類研究所によって野外に放鳥し、追跡調査を行っているとのことです。

ヤンバルクイナ飼育・繫殖施設 見学の様子

また、施設の周囲でもカメラを設置し、野生のヤンバルクイナの親子の撮影に成功したそうです。

野生の親子を観察するために設置された自動撮影カメラ

最後に、ヤンバルクイナの保全活動に尽力されている、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄の長嶺理事長、公益財団法人山階鳥類研究所の尾崎副所長より、メッセージを頂きました。

NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄 長嶺理事長より

ヤンバルクイナは絶滅の縁に立たされ、2021年の「絶滅」が予測されていました。多くの関係者の必死の取り組みによって協力して外来種対策や交通事故対策、飼育下繁殖等の取り組みを行い、ようやく生息状況が回復してきた状況です。JAC様からの支援を受けて、世界中で猛威を振るう鳥インフルエンザからヤンバルクイナを守る取り組みと野生のヤンバルクイナの親子をモニタリングしていく調査を実施し、ヤンバルクイナを絶対に絶滅させずに次世代に引き継ぐ活動を進めていきます。

公益財団法人山階鳥類研究所 尾崎副所長より

一時は個体数が半減し絶滅が危ぶまれたヤンバルクイナですが、捕食者であるマングースのコントロールなどで少し回復しています。しかし、将来的に絶滅の危機を減らすためには、沖縄島全体からマングースを除去し、「やんばる」地域の拡大を目指す必要があります。

参考URL

NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 https://www.yanbarukuina.jp/

公益財団法人山階鳥類研究所 https://www.yamashina.or.jp/

NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄の皆様、公益財団法人山階鳥類研究所の皆様、この度は貴重な機会を頂きどうもありがとうございました。