当財団の助成先の1つ「一般財団法人沖縄美ら島財団」の活動をご紹介いたします。

一般財団法人沖縄美ら島財団は、沖縄県において国営公園や水族館の管理運営、亜熱帯性動植物や首里城等に関する調査研究、普及啓発等の事業を実施しております。

海洋生物事業の1つである沖縄美ら海水族館は、環境省の「認定希少種保全動植物園等」として認定されており、県内の希少な爬虫類や両棲類の保全活動に取り組んでいます。

当財団からの助成金は、クロイワトカゲモドキの保全活動に活用していただきました。

 

クロイワトカゲモドキの生態

クロイワトカゲモドキは沖縄県本島とその周辺にのみに生息する原始的なヤモリの仲間です。

低地林~山地林の湿った林床を好み、以前は非常に身近な生き物でしたが、近年の加速する環境開発や違法採集、外来種の脅威等によって絶滅の危機に瀕しており、県の天然記念物に指定されています。

現在、沖縄県の天然記念物・国内希少野生動植物種など様々な法律により保護されています。

 

クロイワトカゲモドキの保全活動

沖縄美ら島財団では、2015年よりクロイワトカゲモドキの海洋博公園内個体群の野外モニタリング調査を継続しており、体表模様を用いた非接触の個体識別手法の開発やそれを応用した個体数推定等を行ってきました。

2018年から飼育研究を開始し、2021年には世界で初の繁殖に成功、今年度で3年連続の飼育下での繁殖に成功しております。

水族館生まれの個体は、2022年4月より沖縄美ら海水族館の無料観覧エリアにて展示を開始し、研究成果報告用のパネルや環境省と沖縄県教育委員会の協力のもと密猟防止ポスターを掲示し、啓発活動を行っています。

クロイワトカゲモドキが繁殖した時の様子

1.産卵環境の検証

クロイワトカゲモドキの産卵行動の観察例が全くなく、産卵場所の記録も1例のみと産卵環境が不明な為、カメラを設置し産卵行動の動画記録や野外の生息地にデータロガーを設置し適正温度・湿度の検証を行いました。

世界初、クロイワトカゲモドキの卵の埋設行動を記録し、適正飼育環境の検証並びに自然産卵場の特定に繋がる域内外の保全に大きく貢献する成果が得られました。また、野外で孵卵条件に合致する環境を発見する事ができました。

【助成金による購入品】産卵行動の動画記録を行うためのアクションカメラGopro
世界初となるクロイワトカゲモドキの卵の埋設行動を記録しました。

 

2.孵卵環境の検証

孵卵温度帯の全貌を解明する為に、データロガーを海洋博公園内の生息地点に設置し孵化率と孵化幼体の成長速度、孵化に適した温度や湿度の検証を現在行っています。

【助成金による購入品】野外用温湿度データロガー
孵卵に適正な温度および湿度を検証するため、データロガーを設置しました。

 

3.啓発活動

沖縄美ら海水族館にて水族館生まれの個体の展示をし、クロイワトカゲモドキのことをより詳しく知ってもらう為のアンケート調査を実施しており、回答頂いた方にオリジナルポストカードをプレゼント中です。

自由記述欄には、企画の継続希望や好評意見等、保全活動を支持する意見が多く寄せられております。

【助成金による購入品】アンケート用ポストカード印刷紙
アンケートに回答いただいた方にオリジナルポストカードを配布しております。ポストカードの配布数には限りがありますので予めご了承下さい。

 

助成金による購入品一例

①冷温庫

クロイワトカゲモドキの卵を孵化させるために使用しました。

➁水槽

飼育と産卵環境の検証に使用しました。

一般財団法人沖縄美ら島財団 クロイワトカゲモドキ飼育担当 山﨑様よりメッセージ

クロイワトカゲモドキの生態は、その夜行性と隠遁性から野生下での観察が容易ではなく、未解明な部分が多くあります。絶滅の危機に瀕している本種を保全するためには、飼育下での調査(域外保全)と野生環境の調査(域内保全)の双方からアプローチをし、特に知見の少ない繁殖特性等の生態情報を蓄積することが急務でした。今年度の保全活動では、JAC環境動物保護財団から域内・域外保全の両面からご助成をいただき、卵が孵化する温度や産卵場所の好適条件等の重要な知見を収集することができました。さらに、生体展示エリアでのアンケート調査の結果からは、多くの来館者の方に本種の現状を知っていただけたことを窺い知ることができ、大変嬉しく思っています。

私達の目指す保全は、生態の調査研究だけではなく、啓発活動までがセットです。沖縄県内で絶滅が危惧されている爬虫両棲類は本種だけではありません。存在を知られる前に、意図せずして生息地が開発されてしまうことが、特に小さく隠れるのが得意な爬虫両棲類では容易に起こり得えます。今後も調査だけではなく、そこで得られた成果を生体展示や解説パネル展示で発信し、少しでも多くの方に、足元にいる希少種に興味をもっていただけるよう啓発活動に尽力していきます。皆様、ご来館の際には爬虫両棲類にもぜひご注目下さい。

今回、沖縄美ら島財団の保全活動をご紹介させて頂きました。クロイワトカゲモドキが見られるのは沖縄美ら海水族館だけです。一人でも多くの人に知ってもらう事も保全活動に繋がりますので、沖縄美ら海水族館に訪れた際は、ぜひチェックしてみてください。

 

参考URL

一般財団法人 沖縄美ら島財団 HP https://www.churashima.okinawa/
一般財団法人 沖縄美ら島財団 Facebook https://www.facebook.com/okinawa.churashima
海洋博公園・沖縄美ら海水族館 Facebook https://www.facebook.com/kaiyohaku.churaumi
海洋博公園・沖縄美ら海水族館 Instagram https://www.instagram.com/kaiyohaku_churaumi/